現代美術家の庭、名作庭家・中根金作の庭、藤森照信の建築物まで…みどころ満載・新勝寺

禅の庭

禅と庭のミュージアム、福山の新勝寺。1965年12月2日益州宗進禅師(臨済宗建仁寺派第七代管長)に深く帰依をした開基・神原秀夫氏が禅師を開山に招請して建立された臨済宗建仁寺派の寺院です。「禅と庭のミュージアム」と銘打っている通り、広大な敷地の中に「禅」に触れるための美術館、庭園、パビリオンが茶室が点在しています。

庭園レポート

とにかく趣向が素晴らしいと噂の新勝寺。まずは洸庭を拝見。現代美術家の名和晃平氏が手掛けたものです。こけら葺きの技法で出来た建物は水に浮かぶ舟のよう。このラインがほんっとうに美しすぎてうっとりしました。


ソテツワラビはなんだか禍々しい見た目なのですが、お庭に何とも言えない独特な世界観を与えていて非常に効果的に感じました。訪れた日は実は内部のインスタレーションはお休みの日で見れずでした…。インスタレーションは真っ暗な中で光や音を楽しむものらしいです。再訪した際はぜひインスタレーションも楽しみたいです。

建築史家・藤森照信氏がてがけた松堂。手曲げ銅板で葺いた屋根の上に松!松!松! 写真で見るより実物の方が何倍も素敵なんですがこの風合いが写真では伝わらない…。ぜひリアルで見ていただきたいです。屋根の装飾ってもっと自由でいいと思います。建物ってもっと屋根が大きかったり目立ってもいいと思う、屋根が大きいと包容力が違う…!


中根金作氏による3つの庭があるのも豪華すぎます。本堂から見て右庭は「無明の庭」。奥に盛り砂がありました。盛り砂は盛り塩と同じような厄除けや浄化の意味があります。本堂から見て左庭は「阿弥陀三尊の庭」。さらに左手には「羅漢の庭」。とても大きい枯山水庭園で、ここまで大きな枯山水庭園を見たのは初めてかもしれません。すごくスケールが大きいのに洗練されていて、石もそこまで大きく高いものを使わず水平的な美しさがあるのは中根金作さんの庭園らしさがとても感じられました。


さらに荘厳堂という日本初の江戸の禅僧・白隠専門の展示館があるのです。これでもか!!というほどの見どころが満載でしかも広大な敷地。じっくり見て回るとかなり時間がかかりますのでお時間に余裕のある時がおすすめです!


◆拝観
無休

◆拝観料
1,500円(大人)

◆見学所要時間
2~3時間

◆アクセス
福山駅から鞆鉄バスで30分、 福山駅から車で25分
広島県福山市沼隈町大字上山南91


歴史コラム

新勝寺には日本発の白隠はくいん専門の展示館がありますが、今回はその白隠について。こちらのコラムでちらっと紹介している仙厓義梵と同じく、白隠もゆるっとした風情の禅画やバラエティに富んだ作風が有名です。34歳で「白隠」を号する前は「慧鶴えかく」という名前でした。84歳で亡くなるまで生涯に5,000点(一説には1万点)に及ぶ書画を描いたといわれています。15歳で出家し、修行を重ね24歳の時に体調を崩すものの養生してさらに修行に励んでいたようです。

白隠の書で年記がわかる初めてのものは「濃陽富士山記・茅斉記」でこの時、32歳だったそうです。また白隠の画で年記がわかる初めてのものは「達磨半身図」で白隠は35歳。白隠の生涯は42歳までを修行の時代、それ以降を布教の時代として書画のほとんどはこの布教の時代に描かれたもの。

白隠の達磨図の変遷から白隠の画風の移り変わりが見て取れるそうです。
30~40代に描かれた達磨図は細筆で注意深く対象をきちんと描こうとする緻密さがあります。50代になる白隠の画の特長である太い線への変容が見られます。60代に描かれたと推測される正宗寺の達磨図は太い線と全体が濃い墨で描かれ黒目の中心も濃くどっしりとした顔つきになってきます。70代に描かれた淵龍寺の達磨図は眼光鋭い気鋭さにあふれています。70代の白隠自身が精力的に各地で布教活動を行っていた影響もあるのではと推測されています。80代に描かれた達磨図は顔が大きくなりなかでも目がかなり大きく描かれるようになります。厳しさだけではなくおおらかさ、見るものをゆったりと包み込ような達磨となっていきます80代の達磨図が白隠の真骨頂と言われているそうですが、その理由が作風の変遷にあるようです。
ひとくちに「白隠の達磨図」といっても年代によって印象がかなり異なりますのでその辺も鑑賞時のポイントです。

ちなみに雪舟の「慧可断臂図えかだんぴず」をこちらで紹介しているのですが、白隠の描いた「慧可断臂図」がこちら!!!なんつう表現力!かわいい…素敵…。観たいよう。

↓雪舟のと比べてみてください、同じ題材でもこんなに違う。面白すぎます。

「百寿字」の墨蹟。「寿」の文字をありとあらゆる書体で。すごくめでたい気分になるので好きなんですよね~。百寿字は新勝寺でも観ることができました。

ikeda

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日本庭園(特に古庭園)と歴史が好き。歴史のアレコレを調べるのと庭巡りがライフワークの管理人が発信するブログです。

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