旧三井家下鴨別邸は豪商・三井家の別邸として明治時代に建てられ、2011年に国の重要文化財に指定され、2016年から一般公開がはじまりました。望楼が特徴的な明治期の「主屋」と大正期に増築された「玄関棟」「茶室」の3棟から構成されています。
◆庭園レポート
主屋前には庭園が広がります。庭園にはひょうたん池があり、杉苔が元気いっぱいで目に眩しかったです。しばらく荒れていた時期もあったそうなのですが、天龍寺の庭園管理などをてがける曽根造園が大正時代の姿に復元したとのこと。
庭園を眺めながらお抹茶とお菓子もいただけます。坪庭のシロチクとネズミ漆喰の壁のコントラストがほんとに小粋で素敵でした。
通常、2階と3階は非公開なのですが秋の特別公開中だったので、2階と3階にも上ることができました。2階の床の間に伊藤若冲の付喪神図が飾ってありました。複製品だけど見れて嬉しい。付喪神はやっぱり可愛い…!!
庭園は回遊式なのでぐるっと回れます。あじさい園もあり、あじさいの時期はとても見ごたえがあるそうです。庭から見た茶室の佇まいがツボでした。
◆開館時間
9:00~17:00(受付終了16:30)
◆料金
500円(特別公開期間中は900円)
◆所要時間
1時間ほど(建物の見学も含んだ場合)
◆アクセス
京都市左京区下鴨宮河町58-2 ⇒地図
京阪本線「出町柳駅」下車徒歩約5分
◆歴史のこばなし
伊藤若冲の付喪神図がかわいかった、とレポート内で書いたので「付喪神」の話を。「付喪神」は室町時代の「付喪神絵巻」に登場する古道具たちが化けた妖怪のこと。付喪神記の現代語訳はネットでも公開されているのでぜひ読んでみてください。
要約すると、長年役目を務めてきた古道具たちが捨てられてしまい、恨みに思った古道具たちが化けてでることを決意。節分の夜に造化の神に祈ったら、それぞれが老婆や鬼、魑魅魍魎や化け狐などの妖怪変化の姿になり、報復のために人間や牛馬家畜などを取って食べたりなどの悪行をつくします。上手に化けた付喪神たちが人肉を肴に酒盛り中↓
自分たちを妖怪にしてくれた造化の神に感謝した付喪神たちは「変化大明神」と号し奉り、社を建てます。他の社にならって祭礼の行列なども行います(百鬼夜行絵巻もこの流れからきているのかな?と思いますがどうなんでしょう)。
その祭礼行列と時の関白殿下のご一行がなんと往来でかち合ってしまいます!慌てふためく家臣をよそに関白殿下は冷静。関白殿下が身に着けていたお守りが火を噴き、炎となって化け物たちを蹴散らしました。
そのお守りをつくった真言密教の僧正が護摩を焚き祈禱すると、不思議な護法童子が!妖怪たちを退治するために現れたのだという。護法童子たちに退治された妖怪たちは悔い改め、発心し、真言密教に帰依することにします。そこから元妖怪たちはちゃんと修行を積んで、悟りを開いていくという…。
退治にむかう護法童子と許してといっている妖怪たち↓
生命のあるものが発心修行して成仏するならばどうして命のないものができないということがあろうか。真言密教の深意を知ろうと思うならば密教の道に入るべきである、と結ばれています。
つまり「真言密教」の尊さを伝えるために描かれた絵巻き伝なんですね!かわいらしく楽しい戯画を通じて、真言密教の深意を伝えるものだとしてみるとより面白く見れますよね。
※画像はすべて国立国会図書館デジタルコレクションより引用しました