五山に列せられた南禅寺・天龍寺・相国寺・建仁寺・東福寺をはじめとする京都の禅宗寺院に庭園がつくられていきました。
禅宗寺院の庭の特徴はなんといっても枯山水の技法が様式化したことです。もともとは涸山水と呼ばれた枯山水はなんらかの理由で水涸れし水のなくなった滝や水のない流れとなった庭を
その趣もよしとしたことからはじまったそうです。
立地的に水源が近くになかった禅寺の塔頭の書院庭園においてはとても有効な手法でした。禅の修行は深山幽谷の大自然の中でおこなうことを理想としています。やむをえず室内や市中で修行する時は理想とする大自然を再現する必要がありました。禅僧の教養として、水墨画や盆石・盆栽・盆庭など箱庭的な考えがあったことも枯山水の発展に影響しています。
ですが、禅宗寺院の庭園は「禅の思想のみ」で構成されているのでは必ずしもないようです。その理由として曹洞宗系の寺院には禅の庭が見られず、臨済系のみに多くみられること。
これは武家と密接なつながりにあった臨済系寺院が多く、塔頭の開祖が大名だったという政治的な側面が影響しています。寝殿作りから書院造へと移り変わり座敷と庭の視覚的関係の変化、鑑賞向きの高品質な庭石の存在など、政治的な理由や建築様式の移り変わり、資材の発掘など複合的な理由によって「禅の庭」は形成されていきました。
禅の寺院の建築方法は書院建築ですので座敷の中から庭に対して対面するような座視鑑賞式です。じっと見られる場所での作庭は緻密な絵画的な構成が求められます。その中でも写実的な手法を用いるか象徴的な手法を用いるかで庭園の趣はがらりと変わります。
・写景・
本物のように写実的に表現するか、さもそれらしい要素をたくさん使い具体的に景を凝縮する。(例)大徳寺 大千院庭園
・写意・
要素を少なくし表現もやや抽象的に縮景する。(例)妙心寺退蔵院 狩野元信の庭
・象徴化・
池、流などの外郭形状は消え抽象的・象徴的に表現。(例)龍安寺
書における楷書、行書、草書のようなもので、取り入れる要素の数によって表現方法が違うようです。