禅の観念的な世界の枯山水と中根金作の名庭、妙心寺・退蔵院

禅の庭

臨済宗大本山妙心寺の山内には46もの塔頭があります。その中でも退蔵院は、6百年以上前に建立された山内屈指の古刹です。

◆庭園レポート
方丈を取り囲むように、ひとつめの庭「元信の庭」があります。室町時代の絵師・狩野元信の作庭です。常緑樹しか使わず一年中変わらない「不変の美」を追求したものと言われているそうです
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元信の庭

そしてもうひとつの庭、昭和の小堀遠州と言われた中根金作が作庭した「余香苑(よこうえん)」は桜、蓮、楓など一年を通して華やぐ庭園で「元信の庭」とはまったく異なる趣が楽しめます。入り口すぐにある枯山水「陰陽の庭」は使う敷砂の色を変え、物事や人の心の二面性を伝えています。天気の良い日に訪れたことも大きいですが、陽の敷砂は白っぽいので明るく反射し、陰の敷砂は黒っぽいのと、樹木の陰が落ちていたのでそれこそ陰陽の対比がすごくわかりやすくて、とても興味深く見れました。それぞれの庭の前で、自分の陰の心、陽の心を合わせだして見つめて見るのもイイかもしれません。とかく、ネがティブなことやマイナス思考が良くないとされがちですが、陰と陽2つの面があるから性質は成り立つのですし、ネガティブなものを無理に排除しなくてもいいんじゃないかな~と思いますよね。

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陰の庭

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陽の庭

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◆拝観
年中無休 9:00~17:00

◆拝観料
500円

◆所要時間
30分ほど

◆アクセス
京都市右京区花園妙心寺町35 地図
JR山陰(嵯峨野)線(亀岡・福知山方面行き)「花園駅」下車、徒歩約7分


◆歴史のこばなし
禅宗では茶道をたしなみますが、この理由は茶道の精神が禅宗に影響をうけているためです。禅の教えで「足るを知る」ということがありますが、侘び寂び(わびさび)の「侘び」は「不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識」です。

不足の美を表現する新しい美意識へと変化し、室町時代後期に茶の湯と結び付いたそうです。「寂び」は、時間の経過によって劣化した様子(経年変化)を意味しています。転じて漢字の「寂」が当てられ、人がいなくなって静かな状態を表すようになったそうです。

鎌倉時代に禅宗が日本に広まりだしたのと共に茶道も広がっていき、半ばセットのような感じで捉えられていたんですね。だから禅宗の寺院には茶室が設けられています。退蔵院にも「囲いの席」という“かくれ茶室”があります。

今でいう隠れ家カフェ的なことなの?というとそうでもなく、参禅を第一に優先していた妙心寺では修行の妨げになるとして、茶道が禁じられた時代がありました。そのため表からはわからないように、隠されるようにつくられたようです。
通常非公開なので見ることはできませんが、どんなにうまく隠されているか見てみたいものですよね。※特別拝観期間中は見れるようです。

ikeda

ikeda

日本庭園(主に古庭園)と歴史が好きな管理人が日本庭園の紹介と歴史コラムをと書いています。京都芸術大学大学院環境デザイン領域日本庭園分野を修了。書いた論文を当サイト内でも公開しています。

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