金地院は臨済宗南禅寺派大本山である南禅寺の塔頭のひとつです。当初は足利4代将軍義持が北山に創建しました金地院ですが、その後荒廃していました。
1605年に徳川家康の信頼が厚かった以心崇伝(金地院崇伝)が南禅寺の住待になり、自坊として現在地に移築・再興しました。
この南禅寺・金地院は狩野派による襖絵や茶室八窓席とならび、特別名勝にも指定されている枯山水庭園も小堀遠州作として有名です。
遠州作とされる日本庭園は全国各地に沢山ありますが、遠州作と断言できる庭はかなり少ないらしく、金地院は遠州作と断言できる数少ない庭の一つだそうです。
◆庭園レポート
小堀遠州が作庭した鶴亀の庭を観に行ってみました。鶴亀の庭ともう一つのお目当ては長谷川等伯の超有名な襖絵「猿猴と老松」。
そして小堀遠州が作った茶室・八窓席が特別公開中でした。ハ窓席は利休~織部~遠州の流れがわかりやすい茶室でした。
鶴亀の庭は禅寺の庭にしては豪壮で華やか、と言われています。借景の取り入れ方がすごいなと思いました。どこが境目かわからないくらい自然と山々と連なり、どこまでもどこまでも広がっていく雄大さを感じました。
夏に行ったことも大きかったかもしれません。青々と茂る緑と夏の広い空が無限の広がりを感じました。
そしてもうひとつのお目当て「猿猴と老松」。かなり間近でじっくり見れるので嬉しかったです。美術品としてのウンチクは私には全然わかりませんが、表現力としてすごくないですかこの愛らしさ!このタッチ!庭園と茶室と、とどめに長谷川等伯の襖絵でかなり眼福な一日になりました。
◆拝観
無休(茶室や襖絵は特別公開期間中のみ公開)8:30~17:00
◆拝観料
大人400円
◆所要時間
20分ほど
◆アクセス
京都市左京区南禅寺福地町 地図
京都駅から市バス5系統 南禅寺下車 徒歩10分
京都駅から地下鉄烏丸線烏丸御池乗り換え⇒地下鉄東西線蹴上駅下車 徒歩5分
◆歴史のこばなし
小堀遠州(正一)は、近江の国に生まれ、はじめ豊臣秀長(秀吉の実弟)の家臣でしたがやがて徳川幕府のもとで大名になります。
千利休、古田織部と続いた茶道の本流を受け継ぎ、徳川将軍家の茶道指南役となります。遠州は織部の創作的な茶の湯を受け継いで、新しい時代にふさわしい創作を果たします。
織部の持っていた激しさを持つ破格の美はすっかり姿を消し、新しい安定した時代にふさわしい優美で均衡のとれた「きれいさび」といわれる茶の湯を創造しました。
「きれいさび」とは一言でいうと「わかりやすく開放的で誰がみても美しい」ものだそうです。確かに茶道具展などで目にしたことのある茶道具に関しても、織部好みのものは形がぐにゃぐにゃで釉薬の色が面白かったり独創性にあふれるものが多いですが、遠州好みのものは均整がとれていて色も繊細なグラデーションのような美しいものが多いイメージです。私は「織部好みは縄文土器みたいで、遠州好みは弥生土器みたいだな~」と、いつも思いながら見ています。それくらい違いがあります。
遠州は後水尾天皇をはじめとする寛永文化の中心人物となり、また作事奉行として桂離宮、仙洞御所、二条城、名古屋城などの建築・造園にも才能を発揮しました。
そういえばどこかの茶道具展でみた遠州自筆の箱書きの文字がめちゃくちゃかっこよくてオシャレで、フォントにしてほしい!と思ったくらいのデザイン性の高さでした。