2019年11月9日に日本庭園文化×音楽のコラボイベント“Niwasoraparty”を大阪・名村造船所跡で開催。約350名のお客様が来場。音楽LIVEの出演者はU-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS、STUTS、AAMYY、dodo、DJ AGEISH。トークに出演の庭師は、猪鼻一帆(いのはな夢想園)、辰己耕造・辰己二朗(グリーンスペース)。
2016年に「日本庭園探訪レポートと歴史コラムのサイト・Niwasora」を立ち上げた時は自分の備忘録のために開設したのですが、若い世代の人にも日本庭園の魅力をもっと知ってもらいたいなあと思い至り2018年に神戸のクラブ・troopcafeでNiwasora主催の音楽イベントを開催。2019年7月には東京渋谷のクラブ・circusでスウェーデン出身の庭師・村雨辰剛氏をトークゲストに迎えた庭師トーク×音楽のイベントを開催。そして今回、庭師のトーク×音楽のライブを大阪の名村造船所跡で開催することになりました。名村造船所跡地はその名の通り造船工場だった跡地を改装して、ライブハウスにした施設。とても広く、メインフロアの外にも使用できるスペースがあったので無茶ぶりとは自覚しつつも、トーク出演に加え庭のオブジェの作成もお願いしました。
この殺風景な感じのメインフロアが…
いのはな夢想園の手にかかればこんな空間に!フロアの中央に枯山水の庭が出現。「一度自分の大好きなバイクを庭のモチーフにしてみたかった」というテーマで枯山水×バイク!これがライブハウス空間に非常にマッチしていて、とにかくクールで渋くてカッコいい仕上がり!ステージ両脇には門松を設置していただきました。
通常の門松ではありえない高さ、そして鋭角にした切り口。松と南天を合わせ、竹で流線的な躍動感を。こんなかっこいい門松みたことないです…。「きれいなだけではなくどこか不協和音を感じさせるような、少しの“気持ち悪さ”をあえて入れるようにしている、その方が人の心に残るから」と猪鼻さん談。
ライブ会場入り口にはグリーンスペースさんによる庭のオブジェ。なんと水槽が埋まっています!テーマは「Octopus garden」。「天(宇宙)と繋がる庭は昔も今もたくさんあるけど、地と繋がる庭があっても面白いのでないかという発想です。日本庭園の手水鉢と地、つまり海がつながっていたら、というのがテーマ。タイトルはビートルズの同名曲から。その歌詞に『上は嵐でも海の下はあったか』という言葉から、こんな厳しい世の中だけど今日は海の下の庭でも眺めながら最高の音楽を楽しんでいただけたらというコンセプトです。」と辰己耕造さん談。
↑夜になると影が濃くなりまた違った表情。しかしカッコイイィィ!
無茶ぶりにもかかわらず、お二組ともこんな素敵な庭のオブジェを作成してくれて…。うれしいことに来場されたほとんどのお客様が写真を撮っていました。そりゃそうですよね、このインパクトとこのカッコよさですから!
↑開場後すぐに、お客様は庭のオブジェを囲んで見学したり写真を撮ったり。
↑ステージから見るとこんな感じで中央に木が見えます。
ニワソラ池田による“日本庭園の歴史トーク”のあと、AAMYYのライブ・U-zhan×環ROYのライブと続きます。
↑U-zhaan×環ROYのライブ風景。諸事情により鎮さん不在…。が、しかし環さんのソロ!とユザーンの歌声が聴けたのはレア!
庭師のトーク・1組目はグリーンスペースさん。なぜ庭師になったのか、個人邸以外にもアパレルショップやホテルなど多岐にわたる仕事の中でどういうことが庭師として求められているのか、今までの事例の解説などをしていただきました。掛け合いが面白い、兄弟ならではの息の合ったトークを展開。
特に私が聞きたかったのはグリーンスペースさんが持つ独自のバランスについてです。和風でもなく洋風でもなく独自のバランスのミックス感、巧なレイヤードが繰り返され「グリーンスペースのスタイル」が構築されている点について。そんなテーマで話しているとライブを終えたラッパーの環ROYさんが飛び入り参加!「庭師として和の素材を重視したい部分とプラントハント的な珍しい植物とのバランス構成比は決まっているのですか?」と。「特に和の素材にこだわっているわけではなく施主の声を聴き、その土地の条件や環境を見てミックスしレイヤードしていきます。その時、その時に合ったサンプリングをします。」と回答。
最後におススメの日本庭園の紹介をしていただきました。耕造さんは「円通寺」と「東福寺本坊庭園」。円通寺はシンプルに居心地がいいこと、東福寺の本坊は重森三玲の代表作であることと庭園の入門編としておススメだから、と。二朗さんは「桂離宮」と「修学院離宮」をすすめてくれました。その理由は「どちらも解説ガイドがついてくれるから。」とのこと。「庭にいってきれいだな、ってだけで終わるのではなく解説ガイドがついてくれて少しでも知識を得て観ると、感じ方が変わるのでおすすめ」とのことでした。ちなみに桂離宮にはひとり女性の方でめちゃくちゃ解説の上手な方がいるそうです。
そのあとは若手のラッパーで若い世代に人気のラッパーdodoのライブ。
ライブ終了後、いのはな夢想園の猪鼻一帆さんのトーク。一帆さんに聞きたかったのは年に数回海外へ赴いている点。国内でも充分オファーがあり人気の庭師なのにどうしてそんなしんどいことを…?と常々不思議に思っていました。「この先何十年も日本で庭を作り続けたいというのが根底にあります。そのために海外で需要のある日本庭園を、海外で良いものを作って逆輸入的に日本のみなさんが庭園の価値に気付いてくれないかな、と。そんな気持ちで海外の需要に応じています。」と猪鼻さん。
事例の解説では昨年完成したkudan houseの庭園についても。kudan hoouseの洋館「旧山口萬吉邸」は築91 年。国の登録有形文化財に指定されています。現在は会員制のビジネスサロンとして運営。洋館と日本庭園、相反するように思うものをつなげたポイントや、創作秘話など。
「周りの環境や建物を取り込んで寄り添う庭をつくることが今の庭師に求められていると思っています。多様に変化できるのが日本庭園の良いところかと。だからこそ海外からの需要も高まっているのかな、と思います。kudan houseでは掻き落としのタイルを一枚一枚手作りで、アプローチはあられこぼしという石の面を探して当てはめていく途方もなく時間と手間がかかる技法で作成しています。また紅葉はとても色とりどりになる紅葉をチョイスして時期が来ればとてもポップな空間になるようにしました。庭を、重苦しい伝統の空間と思わず、どんな人にも可愛いと言って愛される空間になってほしいと思っています。」と。
おススメの日本庭園は「阿弥陀寺」「白砂村荘」「大徳寺瑞峯院」。「阿弥陀寺」は一見自然物にしか見えない滝が実は人工物でその超自然的な佇まい素晴らしいこと、「白砂村荘」は時を経て樹木の根っこあ盛り上がり三次元に時間の経過が加わった四次元の庭になっていること、「瑞峯院」は、自然を模倣したのではなく、音楽のようなリズムと、見る人間にどう見せたいかを考えて完全にデザインされている点などを挙げておススメしてくれました。
↑庭を感じながら音楽を聴くお客様方。
↑最後のステージはSTUTS。みんな気持ちよさげに踊ってました!
今回一緒に共催した、数々のイベントを企画してきたcircusのイベンターの小林さんから「今までにはない独自のイベントになりましたね」とのお言葉。確かにここまで庭園文化に特化した音楽イベントはないだろう、と自負しています。
何よりもうれしかったのは、来ていたお客様が楽しそうに庭のオブジェを眺めて写真を撮っていたり、普段まるで接点がないであろう庭師のお話にとても興味深そうに耳を傾けていたことです。あのみなさんの姿が見れただけで「本当にやってよかったなあ」と心の底から思いました。最初は音楽目当てで来ているお客さんにはウケが悪いんじゃないかって心配だったんですけど、そんなことは全然なく。ものすごく素敵に演出された空間で、音楽を聴いて楽しそうに踊ったりお酒を楽しんだりと極上の一日になったようでした。そんな場所を提供することができたなんて主催者冥利につきます。
↑左から猪鼻一帆さん、辰己耕造さん、Niwasora池田、辰己二朗さん
いのはな夢想園様、グリーンスペース様、お手伝いいただいたスタッフ様、ご来場いただいたお客様に感謝申し上げます!
ちなみにイベントはじまる前にグリーンスペースさんの庭オブジェでパチリ。めちゃくちゃ映えます、庭ってやっぱフォトスポットとして最高!
イベント終了前に記念に。悲しいですがこの庭オブジェは一日だけのもの…あっという間に解体されたときは切なかったですが、1日しか生で見れないっていう贅沢さもイベントの醍醐味かもしれません。
来年も開催するつもりでいるので、またどこかでお会いできればうれしいです!
Niwasora 池田