国の登録記念物、渋い味わいの高野山・櫻池院庭園

仏教の庭

櫻池院は高野山にある宿坊寺院のうちの一つで、1100年代に 白河天皇第四皇子覚法親王によって作られたそうです。本堂は当時のものが現存しているとても貴重なものだそうです。

庭園レポート

櫻池院ようちいんには昭和27年に重森三玲が作庭した庭園があります。国の登録記念物に指定されています。ほぼ長方形の平地に、龍安寺の石庭と同数の15石(七五三の庭。古来から奇数は陽の数としてめでたいものとされていて、その中の三つの数字をとって七五三とした)を用いて石を組んであります。


をくぐり玄関にむかって、視点が動くことを想定して組まれた石組みだそうです。周囲を苔地、全体には白砂を敷いています。ピシ!!!っと整然とした枯山水ですが、周りの木々が豊かで自然のやわらかな線との対比がとてもよかったです。重森三玲らしからぬというか、そこまで派手な巨石(それでも立派な庭石ですが!)が立っていない、青石が使われていないのもこれはこれでかなり渋くて素敵だなぁ~~としばし深みが感じられるお庭を鑑賞しました。高野山は紅葉シーズンでしたが櫻池院は紅葉する植栽が少ないようでそれも常緑の中に差し色のように赤味があって素敵でした。


◆拝観
開いていない場合もあるらしいので電話で確認したほうがベター

◆見学所要時間
15分ほど

◆アクセス
和歌山県 伊都郡 高野町 高野山 293
JR和歌山線 「橋本駅」 で下車。
「橋本駅」 から南海電鉄高野線に乗り換えて 「高野山駅」 まで。
高野山駅からはタクシー、またはバス「大門行き (金堂前で下車)」徒歩3分


歴史コラム

高野山は真言宗の本山として知られており、真言宗の開祖は空海です。空海が最澄とともに遣唐使船に乗り、それぞれ唐で最澄は天台宗と禅、空海は密教の教えを学び帰国。
最澄は天台宗を開き、空海は真言宗を開きました。空海は最澄に密教の教えを授け、天台宗は法華経の教えに禅・戒律・密教が加えられた総合仏教の形になっていきました。空海が学んで日本で広めた密教は浄土真宗以外の宗派に影響を与えています

そもそも密教ってなんだと思いますか?言葉のイメージ的には「秘密の密」の文字に「教え」なのですごくつらい修行した修行僧にしか知りえない特別な教義なの…?というイメージがしませんか。

密教では、すべてのものは大日如来が姿を変えたものであり姿形が異なるだけだという考え方が基本。仏も人も本質的には同じであり、人がもともと備えている仏性が表れれば、現世における肉体のままでも、仏であるという考えです。
つまり密教の密は「隠れているもの、あらわれていないもの」を指しています。人々に本来宿っている「仏性」のことを指しているんですね。

空海が唐にわたったときに密教の仏像や仏画を持ち帰って日本で広めました。「密教はとても奥深いので文章のみで真理を伝えることは困難なので、図画を用いて真理を示すべき」と言ったそうです。そのため、曼陀羅やたくさんの顔を持つ菩薩、憤怒の表情の明王など、密教独自のほとけを表した仏像や仏画が数多く残されて現代の私たちが寺院や博物館などで目にしています。

▲胎蔵界曼陀羅

真言宗といえば独特の密教法具もありますが、密教法具も空海が持ち帰り、広めたもの。造形はインドやチベットに起源があるそうですが、日本独自の美意識と宗教観で独自の形に発展したそうです。密教法具、単純に造形がかっこいいですよね。つい欲しくなってしまいます。

▲真言宗の寺院で目にする機会の多い密教法具

ikeda

ikeda

日本庭園(主に古庭園)と歴史が好きな管理人が日本庭園の紹介と歴史コラムをと書いています。京都芸術大学大学院環境デザイン領域日本庭園分野を修了。書いた論文を当サイト内でも公開しています。

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