日本庭園の“借景”

庭園の見どころ

借景という外部景観を意図的に庭園へ取り込もうとする表現技法が現れたのは17世紀(1601年~1700年)ころ。芸術家の岡本太郎氏は借景の技法を「自然と反自然的要素と対立のまま結合する技術」と記しています。特定の視点から外部空間と庭園空間を有機的に結びつける借景の手法には地形の選択から視点の角度設定まで計算に入れた空間デザインが必要になります。

比叡山を借景としていることで有名な正伝寺円通寺も借景を取り込むのに恵まれた地形を活かされています。円通寺には石組み、正伝寺には白砂の中に刈り込まれたサツキが配されています。
人工的に手を加え整えた庭園景と自然の借景とを生垣や白壁の塀で区切ることによって比叡山の姿を際立たせ、同時に庭園景と借景とを引き寄せる効果があります。この区切りの手法も借景庭園には不可欠な構成要素だそうです。本楽寺はあえてこの区切りを排除していて、面白いおおらかで雄大な空間構成となっていました。他の借景庭園と見比べたり体感してみるのも一興ですね。


▲正伝寺の借景
▲円通寺の借景

円通寺や正伝寺は「比叡山」を借景の対象にしたものでしたが、慈光院や修学院離宮は借景庭園ですがその対象を特定していないのが特徴です。慈光院は生垣越しに大和平野の田園風景や山並みを、修学院離宮の隣雲亭からは大刈込越しに山並みや京都の街並みを一望できます。このような俯瞰的構造の借景庭園ではどのように広大な借景対象と庭園との一体感を実現しているのでしょうか。

慈光院では境内にはいってから書院へ行くまでは外部空間とは遮断されていて書院に座してはじめて、大和平野の田園風景や山並みがパノラマのように展開します。修学院離宮では大刈込に左右を閉ざされた階段を登り切って隣雲亭の前に立った瞬間、素晴らしい眺望が目の前に広がる仕掛けになっています。どちらとも閉ざされた空間からいきなりパッと広がる空間への転換という空間操作によって借景対象を強烈に認識される手法がとられています。たしかに、どちらの庭園に訪れた時も眺望を目にした時の解放感と「わぁっ!」と思わず歓声を上げたほどの鮮烈さをありありと思い出すことができます。修学院離宮の場合は特に、夕暮れだったので池泉に反射する夕日の光の粒まで覚えています。緻密に設計された空間操作によるものだったのですね~。とても面白いです!

▲慈光院の借景
▲修学院離宮の借景

参考文献:中村一、尼崎博正『風景をつくる』

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